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広島地方裁判所福山支部 昭和40年(ワ)184号 判決 1965年2月12日

主文

訴外宇治田季子が被告との間において、別紙第一目録記載の物件についてなした昭和三六年六月二二日広島法務局所属公証人藤田尹作成新第二二、一九八号金銭債務弁済譲渡担保使用貸借契約公正証書による所有権譲渡行為。

訴外宇治田旭が被告との間において、別紙第二目録記載の物件についてなした右公正証書による所有権譲渡行為。

訴外宇治田旭が被告との間において、別紙第三目録記載の物件についてなした昭和三七年七月一三日追加譲渡担保契約による所有権譲渡行為。

はいずれもこれを取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、その請求の原因として次のとおり述べた。

「一、原告は訴外宇治田旭、同宇治田季子に対し昭和三三年一一月二四日広島地方裁判所福山支部において、言渡された同庁昭和三三年(ワ)第一六〇号売掛代金残額請求事件の確定判決に基き売掛金六二五、六七五円の債権を有している。

二、被告は別紙第一、第二目録記載の物件について請求の趣旨第一、二項記載の公正証書により右第一目録記載の物件は訴外宇治田季子から、右第二目録記載の物件は訴外宇治田旭から、いずれも右宇治田季子に対する金一〇〇、〇〇〇円の貸金債権のための譲渡担保契約によりこれが所有権の譲渡を受け、別紙第三目録記載の物件は請求の趣旨第三項記載の追加譲渡担保契約により右宇治田旭からこれが所有権の譲渡を受けている。

三、ところで、ラジオ商を営んでいた右宇治田旭は、昭和三三年多額の負債を残して倒産し、被告はその負債の処理に当つたもので、本件譲渡担保契約当時原告が右宇治田旭及びその妻宇治田季子に対し第一項記載の売掛代金債権を有することは熟知し、また、右宇治田夫妻も宇治田季子が昭和三六年五月一〇日被告から借受けた金一〇〇、〇〇〇円の債務につき、その弁済のために前記記載の譲渡担保契約を締結した当時右宇治田夫妻は無資力であつて、別紙第一ないし第三目録記載の動産がその唯一の財産であること及び原告が同人等に対する前記確定判決による債譲を有していることを知つていたのであるから、宇治田夫妻は右譲渡担保契約によつて債権者である原告を害することを知りながら同契約を締結したものである。

四、よつて原告は被告に対し、詐害行為取消権に基き前記譲渡担保契約の取消を求めるため本訴に及んだ次第である。」

なお、被告の抗弁事実は否認すると述べた。

証拠(省略)

被告は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として「請求原因第一、二項の事実は認める。同第三項につき訴外宇治田夫妻が本件譲渡担保契約締結の際原告を害することを知つていたとの点は否認し、その余の事実は認める。なお、追加譲渡担保契約は昭和三六年五月一〇日宇治田季子に貸与した金一〇〇、〇〇〇円と後に貸与した金六〇、〇〇〇円に対する担保の設定である。」と述べ、抗弁として「被告は右宇治田夫妻と本件譲渡担保契約締結当時原告を害する意思はなかつたものである。即ち、被告は右宇治田夫妻が生活費に困窮していたため、同人等の要請により金一〇〇、〇〇〇円を貸与したもので、その際には担保設定の話はなかつたが、その後に至り同人等から担保を差入れたいとの申入があつたので、同年六月二二日本件公正証書による譲渡担保契約を締結したものであり、追加譲渡担保契約は右貸金一〇〇、〇〇〇円とその後に貸与した金六〇、〇〇〇円に対する担保の設定であつて、いずれも債権者として当然の措置を採つたもので、原告を害する意思はなかつたものである。」と述べた。

証拠(省略)

別紙 第一目録

一、タンス桐 一

二、整理タンス 一

三、着物 一〇

四、羽織 五

五、着物ウール 四

六、茶羽織ウール 一

七、女帯 五

第二目録

一、テレビ受像機シヤープ 一

二、水屋 一

第三目録

一、扇風機フジ 一

二、柱時計 一

三、電気冷蔵庫NEC 一

四、高机 一

五、椅子 四

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